生徒指導提要 改訂版
先日,学校の管理職の先生方を対象とした
研修講師をつとめました。
テーマは,
「生徒指導提要を踏まえたこれからの生徒指導と
相談事例からの教訓」です。
2022年12月に『生徒指導提要(改訂版)』
が公表されました。生徒指導提要は,
生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書です。
学校教育において,生徒指導は,
学習指導と並ぶ2本柱といえます。
それだけ重要な改定です。
改定は,2010年から12年ぶりとなります。
この12年だけを考えても,大きく社会が変化しました。
社会の変化に合わせた内容の改定とともに,
教育現場においても,社会の変化に合わせた
見直しや変化を求めています。
現代的なのが,デジタルテキスト化された点です。
青文字を押したらリンクが張られていて,
用語の説明や条文の確認を,
その場でできるようになっています。
今後も内容に更新があればリンクを修正し,
最新版に保てるようにする予定のようです。
改訂版の生徒指導提要は,300㌻に及びます。
研修を行う上で私は目を通しましたが,
先生方は,これを腰を据えて読むのは
大変だろうと思うので,
重要なポイントを解説しました。
従前の生徒指導の特徴というと,
課題が起きたら対応する,
ルールの適応と順守を基本とし,
それにはみ出る人は指導の対象になる,
という側面があったように思われます。
改訂版は,この従前の生徒指導とは,
大きく意識の変容を求められる内容となっています。
起きてからどう対応するかという以上に,
どうすれば起きないようになるのか
という点へ注力することを求めています。
児童生徒への指導に加えて,
強調されているのが「支援」です。
課題を起こした特定の児童生徒へ指導よりも,
全児童生徒に対する「発達支持的生徒指導」
の重要性を改めて確認する内容となっています。
従前の方法を踏襲しようとする
生徒指導の先生方からは,
ハレーションを起こしそうです。
でも,未だにいじめを背景とする
自殺などの深刻な事態の発生が後を絶たないことの
反省に立ち,先生方の意識も
変わっていくことを強く求められていると感じました。
それだけ,本気が伝わってくる内容です。
もう一つの,キーワードとなるのが,
「自己指導能力」です。
これは,児童生徒が,深い理解に基づき,
「何をしたいのか」,「何をするべきか」
主体的に問題や課題を発見し,
自己の目標を選択・設定して,
この目標達成のため,自発的,自立的,
かつ他者の主体性を尊重しながら,
自らの行動を決断し,実行する力
とされています。
違反があれば即指導,じゃなくて,
違反に至る背景など児童生徒の
個別の事情や状況を把握しながら,
内省を促すような指導となることを目指します。
そもそも何のために設けたきまりであるのか,
その点についても,
教職員がその背景や理由についても理解しつつ,
児童生徒が自分事としてその意味を理解して
「自己指導能力」をもって
自らの行動を決定していくよう
支援していきます。
これらの方向性を見据えると,
従前の生徒指導のやり方も見直しを迫られます。
出席者から事前に寄せられた
「頭髪服装指導」についての質問に対しても,
「ルールの違反即指導」ではなく,
・まず,その校則は時代に即したものとなっているか
・校則の適応においては,指導の前に,
どうして頭髪服装の違反をするのか,
その理由や生徒の心情は聞いたのか。
等のポイントをおさえているか,という指摘をしました。
「生徒指導提要 改訂版」の理念が教育現場に
根付くように,私もこれを踏まえたアドバイスを
続けていきたいと思っています。
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